資生堂の革新的なたるみ研究
皮膚の抗重力システム
「ダイナミックベルト™」
加齢により重力で肌が下がる現象「たるみ」。そのメカニズムを解明するため、資生堂では、皮ふの構造に加え、その動きまで捉える解析技術「4Dデジタルスキン™」を開発しました。その結果、皮ふの表面付近に存在し鳥肌を立たせる「立毛筋」が、顔では密集して並び、重力に抵抗して皮ふを支えることを発見。これを「ダイナミックベルト™」と名付けました。これらの筋肉は年齢とともに衰え、たるみを引き起こします。
インタビューダイナミックベルトの誕生秘話
たるみというのは、重力で肌が下がる現象です。
地球上で暮らす人類は、この重力とともに生きています。
そのため肌の中には、重力に抵抗する何かシステムがあるのではないかというふうに考えていました。
しかし、そこに対して研究を行うことは非常に難しいという現実がありました。
それは重力で肌が下がる、その過程を見る必要があったからです。
つまり、肌の中を4次元的に観察する必要がある。
しかしそのような技術はありませんでした。
そこでその技術を開発することで、肌の中が実際に重力で下がるときにどのようになっているのか、そしてどのように抵抗しているのかを明らかにすることができ、
そしてその成果がダイナミックベルトの発見に繋がりました。
ダイナミックベルト、少しユニークな名前かと思います。
しかし、これは科学的な知見に基づく名称です。皮膚の動きを私達は初めて明らかにすることができました。
その動き、ダイナミクスを支えるそのような力が皮膚にあるということを見出しました。
これが顔の中では、一定の方向に向いている。
そしてそれが重力の方向に向かっている。
まさにベルトのような状態で、重力に抵抗している、
そのため、このダイナミックスを支えるベルトということで、
ダイナミックベルトという名前をつけた経緯があります。
たるみのメカニズム
解明への挑戦
江連フェローはたるみ研究のパイオニアです。これまで、たるみは化粧品の対象外だと考えられていましたが、江連フェローは多くの人が抱える「たるみ悩み」を解決したいと考えました。肌のたるみに関する江連フェローの研究は当時のスキンケア研究の枠を超えたもので、「たるみ」の定義や評価法を定めるところからはじめ、最新テクノロジーを駆使してその主な要因を解き明かしました。それらの研究成果は、化粧品技術者の世界大会(IFSCC)で4大会連続最優秀賞を受賞しています。
IFSCC最優秀賞 受賞歴
- 2014真皮下部の
「アンカー構造™」 - 2016「真皮空洞化™」
- 2018「線維芽
細胞
ネットワーク™」 - 2020「ダイナミックベルト™」
インタビュースキンケア研究の常識を変える
たるみの研究を始めて、もはや30年ぐらいの年月が経ってるかと思います。
私が研究を始めた頃は、世の中にあるスキンケア製品の多くは、肌表面の悩みへの対応が中心でした。
目尻の小じわであったりとか、シミであったりとか。
一方で、世の中の多くの方が悩まれているもの、それは顔の形が加齢とともに大きく変わってくるということでした。
頬が下がり、フェイスラインが曖昧になり、また額には深いしわが刻まれ、頬がこけてきたりします。
そうした悩みというのは、スキンケア製品の対象外だというふうに言われていました。
しかし、化粧品に関わるものとして、何かそうした悩みに応えることができないかと考え、研究開発を始めました。
研究を始めた頃というのは、やはり周りの方と少し違うことをやっているということで、奇異な目で見られることも多くありました。
たるみの研究を一から始める必要があったため、例えば社内の女性の方に逆さまになってもらって、そしてその写真を撮って、顔の形の変化を観察する、そのようなことを行っていました。
周りの方からは、あの人は何をやってるんだろうかというふうに思われていたようです。
絶対に世の中の多くの方に役に立つことができるというふうに確信していました。
それは多くの方が、加齢とともに変化する顔の形に悩んでいたからです。
インタビュー肌のたるみが外見を変えるメカニズム
見た目の老化といったときに、どのような現象が最も見た目の印象に関係しているのかということを調査した研究があります。
その結果、たるみが最も老けた印象を与えるということがわかりました。
実際に考えてみますと、肌表面の小じわであったり、シミであったり、そのようなものは、ファンデーションなどでカバーすることができます。
しかし、顔の形が大きく、加齢で変わること。
これに対しては、そのような基剤的な対応というのは難しい。
そのため、このたるみというのが老けた印象を与える大きな要因となっていると考えられます。
また、このたるみによって様々な肌悩みが起きます。
例えば、頬が下がることで、フェイスラインが曖昧になる、また頬がこけてくるという現象も、たるみによって起きる部分が非常に大きくあります。
さらには、たるみが起きると、それを一生懸命持ち上げようとして、額の筋肉を使うようになる。
そのため、額には深いしわが刻まれるようになります。
たるみが起きると、このように非常に多くの肌悩みへと繋がっていきます。
たるみというのは、正面からは分かりにくいという特徴があります。
これは立体的な形状が正面からはわかりにくいためです。
一方で、斜めから見ると、たるみというのは非常によくわかります。
そのため、この斜め顔を意識するということが、実際の自分のたるみの状態に気づく上で非常に重要です。
たるみの状態をしっかりと把握していただき、それにあった適切なケアを実施していただければと思います。
効果的な成分とマッサージの
探索
厳選された植物エキス
- ダイナミックベルト・アンカー構造の改善が期待される「甘草(カンゾウ)」抽出成分
- 表情筋の筋細胞の機能を高める可能性が確認された「吾亦紅(ワレモコウ)」抽出成分
- 真皮の空洞化の改善が期待できるシソ科植物の「マンネンロウ」抽出成分
- 線維芽細胞ネットワークの回復を助ける可能性があるアヤメ科植物の「西洋菖蒲」抽出成分
試行錯誤の末に開発されたマッサージ
- フェイスラインの下
- ほお
- 目の下
- 首~フェイスライン
ストレッチ(マッサージ)により、加齢によって衰えたダイナミックベルトの改善につながることが期待されます。正しい方向にマッサージすることで、たるみが改善される可能性を発見したのです。
インタビューたるみの解決策を見つける
筋肉にはいくつかの種類があります。
今回発見したダイナミックベルトを生み出す立毛筋ですが、それは自分では意識して動かすことができない筋肉です。
そのため、エクササイズのようなトレーニングをして鍛えることが非常に難しい。
成分開発に関しては、非常に多くの中から有効なものを選んでおります。
まず初めに、データベース上で非常に多くの成分を探索し、その中で絞り込んだ成分、数百の成分の実際の効果を検証し、最終的に一品に効果を生み出しました。
それがこの甘草エキスです。
美容法ですが、実際の肌への効果というものを重視して研究開発を進めました。
そしてそれは、肌の細胞にどのように働くのか、そして皮膚組織をどのように再生に繋げていくのか、そうしたことまで深く掘り下げて研究開発を行い、
どのような方法が最も効果的なのかということを実際の人の肌で研究しながら研究開発を進めました。
今回開発した美容法は、立毛筋に対して効果的にアプローチすることが可能です。
このような方法を使い、ダイナミックベルトを改善し、たるみの改善に繋げていっていただければと期待しております。
資生堂 みらい開発研究所
フェロー
江連 智暢(えづれ とものぶ)
入社から約30年間、一貫してアンチエイジング領域の研究開発に従事。化粧品技術者の世界大会(IFSCC)で世界初の4大会連続で最優秀賞を獲得したほか、皮膚科学の国際学会、日本美容皮膚科学会、日本結合組織学会など様々な国内外の学会で受賞。2020年には、資生堂151年の歴史の中で創設された研究職の最高位である資生堂初代フェローに任命された。
インタビュー肌の可能性を信じる
年齢を重ねた肌(ということですが、)その肌には無限の可能性があるというふうに考えています。
今まで、肌の細胞を生み出す幹細胞というものがあるんですけども、その幹細胞は加齢とともに失われてしまうということが言われていました。
つまり肌を再生する能力というのが、加齢とともに衰えていってしまうんではないかというふうに考えられていました。
しかし、(研究を進めていくと、この)肌の中にも、幹細胞が溜まっている場所があって、またそれが高齢者でも十分に保存されているっていうことが判り、
年齢を重ねた肌にも、肌を再生する高い能力が保存されているということがわかりました。
まさにPotential has no age、そのようなことを多くの場面で実感します。